旬を迎える冬だけでなく一年中流通している水菜は、実はとても栄養豊富な緑黄色野菜です。身近なスーパーでもお手頃価格で手に入るため、毎日の献立作りに活用しましょう。今回は、水菜に含まれる栄養成分を紹介します。あわせて、水菜の栄養を効率良く摂取する方法や、おすすめの食べ方も解説しているので参考にしてみてください。
水菜に含まれる栄養
水菜とは、アブラナ科に属する京都原産の野菜です。「京菜」とも呼ばれていて、生のままサラダで、加熱してお浸しや煮物に、スープやお鍋の具材としてなど幅広く使えるため、毎日の献立作りに活用できます。
水菜は全体的に淡緑色の色合いで茎が細長く、葉に深いギザギザの切れ込みが入っているのが特徴です。水菜の淡い色合いから、あまり栄養がなさそうだと思い込んでいる方は多いかもしれません。
しかし、水菜はほうれん草や小松菜と同じ緑黄色野菜であり、ビタミンやミネラルを豊富に含む食材です。ここでは、水菜に含まれる栄養素をみていきましょう。
カルシウム
水菜には、100gあたり210mgのカルシウムが含まれています。カルシウムは骨の健康をサポートする栄養素で、老若男女、誰にとっても欠かせません。
カルシウムを豊富に含む代表的な食品といえば牛乳がありますが、牛乳におけるカルシウムの含有量は100gあたり110mgなため、水菜は牛乳よりも100mgも多くカルシウムを含んでいることになります。
さらに、同じ緑黄色野菜で比較すると、ほうれん草のカルシウム含有量が100gあたり49mgであるのに対して、水菜は約4.3倍におよびます。水菜はカルシウムがしっかり摂れる栄養価の高い野菜です。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
ビタミンC
水菜には100gあたり55mgと、レモンの半分以上に相当するビタミンCが含まれています。ビタミンCは免疫機能の維持に役立つ栄養素で、メラニン色素の生成を抑制するなど美しい肌をつくるはたらきも期待できます。
同じ緑黄色野菜で比較すると、ほうれん草のビタミンC含有量は100gあたり35mgです。水菜には、ほうれん草の約1.6倍のビタミンCが含まれています。
出典:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(文部科学省)
β-カロテン
水菜からは、100gあたり1,300μgのβ-カロテンを摂取できます。β-カロテンは、体内で抗酸化作用のあるビタミンAに変換される成分です。ビタミンAは老化や動脈硬化、免疫機能の低下などを引き起こす、活性酸素を除去するのに役立つとされています。
厚生労働省は日本食品標準成分表で、可食部100gあたりのβ-カロテン含有量が600μg以上のものを緑黄色野菜として定義しています。水菜のβ-カロテン含有量は、緑黄色野菜の基準の約2.2倍におよびます。
出典:厚生労働省「「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の取扱いについて」
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
カリウム
水菜には、100gあたり480mgのカリウムが含まれています。カリウムは余分なナトリウムを排出し、高血圧やむくみを予防するのに役立つ栄養素です。
ほうれん草のカリウム含有量は100gあたり690mg、小松菜は500mgとなっており、水菜から摂取できるカリウムの量は、ほかの代表的な緑黄色野菜と並べても遜色ありません。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
鉄
水菜には、100gあたり2.1mgの鉄分が含まれています。同じ緑黄色野菜のなかでも、ほうれん草の100gあたり2.0mgに並ぶ含有量です。
鉄は血液をつくるために欠かせない栄養素で、不足すると貧血を引き起こします。鉄がしっかり摂れる水菜は、月経のある女性の強い味方となる野菜です。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
食物繊維
水菜には、100gあたり3.0gの食物繊維が含まれています。食物繊維は便通を整えるとともに、血糖値やコレステロール値を下げるのにも役立つ栄養素です。
参考に、ほうれん草の食物繊維の含有量は100gあたり2.8g、小松菜は1.9gです。緑黄色野菜のなかでも、水菜は食物繊維の含有量が多いといえます。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
水菜に含まれる栄養を効率良く摂る食べ方
水菜は生でも加熱しても食べられますが、栄養を余すことなく摂りたい場合、食べ方には気を配ることが必要です。こちらの表の通り、水菜の栄養素の摂取量は調理方法によって差が出るためです。
水菜(可食部100gあたり)の栄養素量比較
水菜の栄養 | 生で摂取した場合 | 茹でて摂取した場合 |
---|---|---|
カルシウム | 210mg | 200mg |
ビタミンC | 55mg | 19mg |
β-カロテン | 1,300μg | 1,700μg |
カリウム | 480mg | 370mg |
鉄 | 2.1mg | 2.0mg |
食物繊維 | 3.0g | 3.6g |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
例えば、水菜に含まれるビタミンCやカリウムは水溶性で、茹でると摂取量が大きく減少しがちです。一方、β-カロテンや食物繊維は茹でても損出が少なく、加熱でカサが減る分多く食べることができ、栄養素の摂取量も増やせるというメリットがあります。
ここからは、水菜に含まれる栄養を効率良く摂るための食べ方を紹介します。
油と一緒に食べる
水菜は、油を加えて食べるのがおすすめです。水菜に含まれるβ-カロテンは脂溶性で、油と組み合わせて食べると吸収率が向上するメリットがあります。
生食ならオリーブオイルや油が入ったドレッシングをかけたり、ツナのオイル漬けを混ぜたりすると効率良くβ-カロテンを摂取できます。茎が硬い場合は、軽く塩もみすると生でも食べやすくなります。
水菜を加熱調理する場合は、油で炒めましょう。カサが減るぶん食べる量を増やせて、よりたくさんの栄養素が摂れます。さらに、豚肉・ベーコン・ツナなどの脂質が豊富な具材を加えると栄養の吸収率が良くなり、旨みもアップするため一石二鳥です。
水菜自体の調理法だけでなく、あわせる献立でも工夫することができます。例えば、唐揚げのように油が多い主菜にご飯や汁物、水菜のサラダを組み合わせることでも吸収率がアップし、献立全体の栄養バランスも良くなります。
動物性たんぱく質と一緒に食べる
水菜には動物性たんぱく質が豊富な具材をプラスして食べるのが、効率良く栄養を摂るコツです。水菜に含まれる鉄は、鉄の中でも植物性の非ヘム鉄といわれるもので、単体では身体への吸収率があまり良くありません。動物性たんぱく質と一緒に摂ることで、植物性の鉄でも吸収率を高めることができます。
動物性たんぱく質は、肉・魚・卵などに豊富に含まれます。また、ビタミンCにも非ヘム鉄の吸収率を高めるはたらきがあるため、レモンを調味料がわりにサラダにかけるのもおすすめです。
きのこ・鮭と一緒に食べる
水菜を食べるときに、きのこや鮭を具材に加えるのも効果的です。きのこや鮭に含まれるビタミンDは、水菜に含まれるカルシウムの吸収率を向上させるはたらきが期待できます。
そのほか、卵・いわし・しらすもビタミンDを豊富に含む食材です。カルシウムも単体では体内に吸収されにくいため、食材をうまく組み合わせて効率良く摂取しましょう。
スープにして食べる
水菜のカサを減らしてたくさん食べたい場合は、煮込んでスープにしましょう。水に溶けやすい性質を持つビタミンCなども、スープにすれば溶け出した煮汁ごと食べられるため、水菜の栄養を余すことなく摂取できます。
寒い冬には、水菜の鍋物もおすすめです。〆はご飯やうどんを入れて、栄養が溶け出したスープもいただきましょう。
まとめ
水菜にはカルシウム・ビタミンC・鉄をはじめ、さまざまな栄養素がたっぷり含まれています。食物繊維も豊富で、腸内環境が気になる方にもおすすめです。味にクセがなく、シャキシャキした食感が楽しめる水菜は、生食だけでなく炒め物やスープでもおいしく食べられますが、摂りたい栄養素にあわせて調理方法を工夫することが大切です。冬に旬を迎える水菜をおいしく効率的に活用して、日々の食卓に取り入れてみましょう。
監修者プロフィール

小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。 シェフ歴30年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。 ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。 日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。