卵は通年で手に入りやすく、和洋中と味付けを選ばず幅広く調理に活用できるため、毎日のように食卓に登場しているご家庭もあるのではないでしょうか。
しかし、気付けば賞味期限が迫っていることも多い卵。卵は傷むとサルモネラ菌が発生し、食中毒を引き起こす場合もあります。賞味期限や適切な保存方法についての正しい知識をもつことが大切です。
今回は、卵の賞味期限や腐った卵の見分け方、保存方法などについて紹介します。
卵の賞味期限は2週間程度
卵の賞味期限は、パック詰めされてから2週間程度に設定されることが一般的です。これは『“生の状態で”卵を食べられる期限』のことを指します。
なお、賞味期限とは「おいしく食べられる期限」のことです。似た言葉である消費期限は「安全に食べられる期限」のことを指し、傷みやすい食品に表示されています。
ここではさらに詳しく、卵の賞味期限の決め方と注意点について解説します。
卵の賞味期限の決め方
卵の賞味期限は、サルモネラ菌が急激に増え始めるまでの日数と、家庭の冷蔵保存(10℃以下)の期間を考慮して決められています。
イギリスのハンフリー博士の研究にもとづいて算出された、卵を生食できる日数(理論値)は次の通りです。
保存温度(℃) | 日数 |
---|---|
10 | 57 |
12 | 51 |
14 | 45 |
16 | 40 |
18 | 35 |
20 | 30 |
22 | 26 |
参考:一般社団法人 日本養鶏協会「鶏卵の日付等表示マニュアル」
保存温度が高くなるほど菌は増えやすくなるため、卵を生食できる期限は夏が短く、冬は長くなります。
日本には四季があり、季節による気温の変化が激しく、卵を管理する温度にも差が出ることから、1年を通しておよそ2週間の賞味期限で設定されることがほとんどです。
ヒビの入った卵の賞味期限は注意
殻にヒビが入った卵は、通常よりも早く傷みます。サルモネラ菌が繁殖するリスクが高まるため、賞味期限内であっても食中毒を引き起こしてしまうおそれがあります。
ヒビが入った卵の生食は避け、火を通して食べましょう。誤ってヒビが入った場合は、必ず当日中に加熱して食べることが大切です。
卵は殻が薄く、ちょっとした刺激でヒビが入ってしまいます。そのため、いつヒビが入ったのか分からない卵があれば、食べずに廃棄することをおすすめします。すでにサルモネラ菌が発生しているおそれもあるので注意しましょう。
卵の賞味期限が切れたら食べたらだめ?
賞味期限が切れた卵を生で食べると、サルモネラ菌による食中毒を引き起こすおそれがあるため、注意しましょう。
ただし、はじめにお伝えしたとおり卵の賞味期限は「“生の状態で”食べられる期限」を指します。そのため、賞味期限を過ぎてしまった卵も火を通せば食べることができます。
卵だけを加熱する場合は中心温度70度で1分以上、ほかの食材と一緒に料理に入れる場合は中心温度75度で1分以上火を通せば、サルモネラ菌はほとんど死滅します。
とはいえ、長く放置しておくと傷んでしまうため、賞味期限が切れたあとはできるだけ早く加熱調理して食べ切るようにしましょう。
腐った卵の見分け方
賞味期限が切れて間もない場合は、火を通せば食べることができます。しかし、そのまま放置すると卵も腐ってしまいます。
ここでは、賞味期限が切れて腐った卵を見分ける方法を紹介します。
卵を割らずに見分ける方法
卵を割らずに外側から見分ける方法を2つ紹介します。
水に浮かべる
新鮮な卵は、水に入れると沈んで横に倒れます。また、沈んでも倒れない場合は、古くはなっているもののまだ食べられる卵です。
一方で、腐った卵は水に入れると浮きます。卵白や卵黄に含まれるガスが、時間の経過とともに殻の外に抜けていくため、浮いた卵は腐っていると判断して良いでしょう。
光に透かす
卵を持って光に透かしてみましょう。新鮮な卵は卵黄の輪郭が中央に見え、卵を動かしても位置が変わりにくいのが特徴です。
一方で、傷んでいる卵はそもそも卵黄が見えません。
この方法は、透かす光の強さによっても変わるため、水に浮かべる方法と併用して試してみると良いでしょう。
卵を割って見分ける方法
水に浮かべたり、光に透かしてみたりしてもいまひとつよく分からない場合は、割って見分ける方法も知っておくと良いでしょう。
ここでは、卵を割って見分ける方法を4つ紹介します。
黄身と白身が盛り上がっているか
卵を割ったとき、黄身と白身がぷっくり盛り上がっているものは新鮮な卵です。
古ければ古いほど卵は盛り上がりません。また、白身や黄身にハリがないものは古くなっている卵です。
盛り上がりやハリがわ分かりやすいように、平らな皿に割って確認することがポイントです。
黄身と白身が分かれているか
卵を割ったとき、白身と黄身がはっきり分かれているのは新鮮な卵です。
傷んでいる卵は、割ってすぐに黄身が白身と混ざってしまうことがあります。これは、白身や黄身にハリがなくなっている証拠なので、傷んでいると見なして廃棄しましょう。
白身が白濁しているか
新鮮な卵は白身が白濁していることがあります。透明で透き通っているほうが新鮮そうなイメージですが、新鮮な卵にしか含まれないガスで白身が濁るため、白濁しているほうが新鮮です。
ただし、白身が透明だからといって直ちに廃棄すべきというわけではないので、ほかの見分け方と併用して確認することをおすすめします。
異臭がしないか
腐った卵は異臭がします。硫黄のような臭いがしたら腐っていると判断して良いでしょう。
賞味期限を早める?卵の間違った保存方法4選
卵は保存方法を間違えると、賞味期限を待たずに傷んでしまうおそれがあります。
賞味期限を早めてしまう、間違った保存方法を4つ紹介します。
よくある間違い1|常温で保存する
スーパーでは卵が常温で販売されていることが多いため、自宅に持ち帰っても常温で保存する方もいるのではないでしょうか。
しかし、卵が常温で販売されているのは、結露による傷みを防ぐためです。
卵の賞味期限は10度以下で保存した場合を前提として決められているため、購入後は冷蔵庫での保存をおすすめします。
なお、10度以下であれば常温保存でも問題ないのですが、気候によって部屋の温度は変わりがちです。一定の温度を保つためにも、冷蔵庫で保存するのがベストです。
よくある間違い2|冷蔵庫のドアポケットで保存する
多くの冷蔵庫は、ドアの裏側のドアポケットに卵を保存するスペースがあります。当然のようにドアポケットに卵を保存している方が多いと思いますが、実はこの方法は最適とはいえません。
冷蔵庫のドア付近は開閉によって温度が変わりやすく、推奨されている10度以下での保存を保ちにくいのです。
また、開閉の振動によって傷みやすくなってしまいます。
卵は購入時のパックに入れたまま、冷蔵庫の奥で保存するのが理想的です。温度変化や振動の影響で卵が傷みやすくなってしまうため、ドアポケットでの保存は可能な限り避けましょう。
よくある間違い3|尖っているほうを上にする
丸いほうを下にしたほうが安定するように見えるので、卵の丸いほうを下、尖っているほうを上にして保存する方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は尖っているほうを下にして保存するほうが良いと言われています。
卵の丸いほうには、「気室」と呼ばれる空気が入った空間があります。丸いほうを下にするとこの気室の空気に卵黄が触れやすくなり、細菌が入り込むおそれがあります。
気室がある丸いほうを上にしておくと、卵黄が気室に触れることはありません。
冷蔵庫に入れる際は、尖ったほうが下になるよう意識して保存すると良いでしょう。
よくある間違い4|卵を洗う
卵の殻は不衛生だからと卵を洗う方もいますが、卵を洗うのはNGです。卵は大半が洗ってからパック詰めされているので、購入後は洗わずにそのまま保存しても問題ありません。
卵の殻には小さい穴がたくさん空いており、必要以上に洗うと卵の内部に水が入り込み、菌を繁殖させてしまうおそれがあります。
洗うことで細菌が入り込むと、卵が早く傷んでしまいます。汚れが気になる場合は、水気をしっかり絞った布巾で拭き取るだけにしておきましょう。
まとめ
卵の賞味期限は、パックに詰められてから2週間程度に設定されていることが多いですが、「“生の状態で”食べられる期限」のため、賞味期限を過ぎても火を通せば食べることができます。
賞味期限がいつか分からなくなってしまった卵は、水に浮かべたり、割って臭いを嗅いだりしながら食べられるかどうかの判断が必要です。
卵を無駄なく消費するためにも、卵の賞味期限の意味や、適切な保存方法を覚えておきましょう。
監修者プロフィール

小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。 シェフ歴30年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。 ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。 日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。