日本の伝統食品のひとつである納豆は、栄養価の高さからスーパーフードとも呼ばれています。たんぱく質や食物繊維、ビタミンKなど、健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれているので、積極的に毎日の食事に取り入れましょう。
今回は、納豆に期待できる健康効果や、栄養を逃さないおすすめの食べ方を紹介します。
納豆を毎日食べると健康リスクが減少する!?
「納豆を毎日食べることが、生活習慣病のリスクを減らすのに役立つ」という研究結果があります。
これは、納豆に含まれる食物繊維や納豆菌が、腸内の善玉菌を増やすとされているからです。
また、納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には、血栓(血のかたまり)の予防効果も期待されています。さらに、血流が促進されることで、冷え性やむくみの軽減にもつながる可能性があるのです。
それだけでなく、納豆にはたんぱく質やビタミンK、ビオチンも多く含まれており、骨や皮膚、粘膜の健康をサポートする効果も期待できます。
納豆に含まれる具体的な栄養素とその効果は、次で詳しく紹介します。
納豆の栄養素と期待できる効果
納豆を毎日の食生活に取り入れることで、健康面だけでなく美容面でもさまざまなメリットが得られます。納豆に含まれる主な栄養素は、次の通りです。
<納豆100gあたりの主な栄養成分>
成分名 | 含有量 |
---|---|
エネルギー | 184kcal |
たんぱく質 | 16.5g |
食物繊維(※) | 9.5g |
ビタミンK | 870μg |
葉酸 | 130μg |
パントテン酸 | 3.63mg |
ビオチン | 18.2μg |
※食物繊維量は「AOAC.2011.25法」での成分量を記載しています
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
それぞれの栄養素が体内でどのような働きをするのか、詳しく解説します。
たんぱく質|身体を構成する
納豆には、身体を構成するたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質は体内でアミノ酸に分解・吸収され、筋肉や臓器、皮膚、髪の毛、爪などを作る材料として再合成されます。また、炭水化物や脂質と同様にエネルギー源としても利用される重要な栄養素です。
食物繊維|コレステロールを低下させる
食物繊維は体内で消化・吸収されない栄養素ですが、小腸での栄養素の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の急激な上昇を防ぎます。
また、コレステロールを吸着して体外に排出することで、血中コレステロール値を下げる効果もあります。食物繊維はナトリウムの排出も促すため、高血圧の予防にも効果的です。
ビタミンK|丈夫な骨を作る
納豆には、脂溶性ビタミンのひとつであるビタミンKも多く含まれています。ビタミンKは、出血時に血液を固める「血液凝固因子」の生成に不可欠な成分で、体内で不足すると出血が止まりにくくなります。
また、ビタミンKは丈夫な骨を作る上でも重要な栄養素です。骨に存在するたんぱく質である「オステオカルシン」を活性化させることで、カルシウムを骨にしっかりと定着させる働きがあります。
葉酸|貧血予防と健康を維持する
葉酸は、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンです。
ビタミンB12とともに赤血球を作ることから「造血のビタミン」とも呼ばれており、不足すると貧血を引き起こす原因になります。また、葉酸はDNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の合成を促し、細胞の生産や再生をサポートします。
パントテン酸|ストレスを緩和する
パントテン酸は、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンです。
エネルギー代謝や免疫抗体の合成、薬物の解毒、脂質の代謝を促すHDLコレステロールの合成など、さまざまな効果があります。
ストレスに対抗する副腎皮質ホルモンの合成にも関わっていることから、パントテン酸は「抗ストレスビタミン」とも呼ばれています。
精神的・肉体的に疲れを感じやすい方や、ストレスがたまりやすい方は、多めに摂取すると良いでしょう。
ビオチン|肌と髪の健康を維持する
ビオチンは、ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンで、「ビタミンB7」や「ビタミンH」とも呼ばれています。
皮膚や粘膜、髪、爪の健康維持に深く関わっており、不足すると脱毛やアトピー性皮膚炎、食欲不振などの症状が現れることがあります。
納豆の効果を引き出すポイント
納豆を食べるタイミングや組み合わせ、調理方法などに気を配ることで、納豆の持つ力を最大限に引き出すことができます。
ここで紹介するポイントを押さえ、毎日の健康づくりにさらに役立てましょう。
食べる前に常温に戻す
納豆は冷蔵保存が基本ですが、冷たいまま食べるよりも、常温に戻したほうが納豆菌が活性化し、ネバネバ成分が増加するといわれています。
冷蔵庫から出して30分ほど置いてからかき混ぜると、ふんわりとした食感でよりおいしく味わえます。
食べ合わせを意識する
納豆を食事に取り入れる際、食べ合わせを意識することで栄養価が向上し、健康効果が高まるといわれています。納豆と相性の良い食材には、ねぎ、キムチ、酢、オクラ、海藻類などがあります。
例えば、ねぎに含まれるアリシンには納豆のビタミンB1の吸収を高める働きがあり、キムチに含まれる乳酸菌は納豆と同じく腸内環境を整えてくれます。また、納豆に少しの酢を加えると食感がやわらかくなり、納豆特有の匂いも抑えられます。
そのほか、血流を良くするといわれるβ-カロテンを含むオクラや、食物繊維・ミネラルを含む海藻類との組み合わせもおすすめです。
目的に合わせたタイミングで食べる
納豆は、朝食と夕食のどちらで食べても、それぞれ異なるメリットがあります。腸活を意識する場合は朝食に、生活習慣病が気になる場合は夕食に取り入れるのがおすすめです。
朝食を摂るだけでも腸の動きは活発になりますが、納豆に含まれる食物繊維が腸内環境を整えることで、便通の改善が期待できます。
また、納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には、血栓を溶かす作用があるといわれます。就寝中は血流が滞りやすくなりますが、夕食に納豆を摂取することでナットウキナーゼの効果が6~8時間持続し、血栓の予防に役立つとされます。
目的に合わせて食べるタイミングを工夫し、納豆の健康効果を引き出しましょう。
熱に気を付ける
納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」は熱に弱いため、納豆は加熱せずに生で食べるのがおすすめです。
また、熱々のご飯にも注意が必要です。炊きたてのご飯の温度は約60~80度となっており、ナットウキナーゼは50℃程度で活性が低下し始め、70℃以上になるとほとんど失活します。熱いご飯にのせるとナットウキナーゼの効果が薄れてしまうため、少しご飯を冷ましてから納豆をかけましょう。
まとめ
納豆は、身体を構成するたんぱく質や、血中コレステロール値を下げる食物繊維、丈夫な骨を作るビタミンK、貧血を予防する葉酸のほか、ストレスを緩和するパントテン酸、肌と髪の健康を維持するビオチンも豊富です。
ただし、納豆に含まれるナットウキナーゼは熱に弱いため、栄養を逃さないためには加熱せず生で食べるのがポイントです。ぜひ毎日の食事で効果的に納豆を取り入れ、健康維持に役立てましょう。
監修者プロフィール

小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。 シェフ歴30年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。 ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。 日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。