「しいたけは洗ったほうが良い?それとも、洗わずそのまま調理したほうが良い?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、しいたけは洗わずに調理するのが正解です。
今回は、調理前にしいたけを洗わなくて良い理由や、正しい下ごしらえの方法などを紹介します。
しいたけは洗わなくても大丈夫!
しいたけをなぜ洗わなくても良いのか、不思議に思う方もいるでしょう。ここでは、しいたけを洗わなくても良い理由を2つ紹介します。
理由1.きれいな環境で栽培されている
しいたけを洗わなくて良い理由のひとつは、しいたけがきれいな環境で栽培されていることです。しいたけの栽培方法には原木栽培と菌床栽培の2つがあり、どちらもしいたけに土や泥がつかないよう生育環境が整えられています。
原木栽培とは、1mほどに切り出したクヌギ・コナラ・ミズナラなどの原木にしいたけの種菌を打ち込み、直射日光が当たらない場所で育てる方法です。菌床栽培は菌床(おがくずや米ぬかを固めた人工のブロック)に菌を打ち付け、温度や湿度管理を厳密に行った室内で育てる方法で、全国で生産されるしいたけのうち9割以上は菌床栽培で育てたものです。
原木栽培・菌床栽培を問わず、市販のしいたけは虫食いや汚れ・カビなどがないかしっかりとチェックされています。商品化できるもののみを選別して出荷されているため、安心して購入できます。
理由2.農薬を使わずに栽培されている
しいたけは、できるだけ農薬を使わない栽培が推奨されているため、安全性が高くなっています。農薬を使う場合でも、法律で許可されている農薬以外は使用できず、量や使い方も厳密に管理されています。
農薬を使わずに栽培されていることで安全性が高い点も、しいたけを洗わなくとも調理できる大きな理由です。
しいたけを洗うと旨みや香りも落ちてしまう
しいたけを洗う必要がないのは、衛生面や安全面の問題だけでなく、風味や栄養面にも大きく関係しています。しいたけは水分に弱く、水洗いすると水分を吸収して水っぽくなるほか、香りや味が水と一緒に流れてしまい、しいたけ特有の風味を感じられなくなってしまいます。
また、しいたけに豊富に含まれるビタミンやミネラルはいずれも水溶性で、水洗いすると栄養素が溶け出してしまいます。栄養を無駄なく摂取するためにも、しいたけの水洗いはできるだけ避けたいものです。
【しいたけ】どうしても汚れが気になるときは?
しいたけを洗うのは避けた方が良いとは言っても、どうしても汚れが気になることもあるでしょう。そんなときは、次に紹介する方法を試してみてください。生しいたけ・乾燥しいたけどちらでも活用できます。
短時間で水洗いする
しいたけは洗わない方が風味や香りを楽しめますが、絶対に水洗いしてはいけないものではありません。どうしても汚れが気になる場合は洗っても大丈夫です。
しいたけを水洗いするときは、汚れが気になる部分を中心に、調理する直前に短時間で軽く洗う程度に抑えましょう。強くこすらず、優しくなでるように洗うのがコツです。
塩水で洗う
しいたけを水洗いするときは、真水ではなく塩水を使うのがおすすめです。塩水を使うとしいたけの細胞が引き締まり、香りや栄養素が抜け出る作用を抑えられます。
塩水の濃度はできるだけ海水に近くなるよう、水1リットルに対して小さじ1杯から2杯程度の塩を溶かして塩水を作りましょう。ただし、塩水を使っても、完全に栄養が流れ出るのを防ぐことはできないため、短時間でさっと洗うようにしましょう。
ペーパータオルやふきんで拭き取る
しいたけについた軽い汚れであれば、水洗いではなくペーパータオルやふきんを濡らして拭き取るだけでも落とせます。しいたけは水洗いに弱いものの、ペーパータオルやふきんの水分程度であれば、おいしさに大きく影響を与えることはありません。
しいたけのかさに入り込んでいる汚れを落とすには、かさを上・軸を下になるように持ち、上から軽くはたくと汚れを落とせます。
そのほか、しいたけの石づきの部分に、白いふわふわしているものがついているのを見たことがある方もいるでしょう。これは汚れやカビではなく、しいたけの菌糸が伸びた「気中菌糸」というものです。
気中菌糸は食べても問題ないものの、気になる場合はペーパータオルで拭き取ってから調理しましょう。
【注意】洗う必要はないものの食べる前に加熱が必須
ここまで紹介したように、調理前にしいたけを洗う必要はありませんが、生で食べるとしいたけ皮膚炎を引き起こすおそれがあるため、加熱は必須です。
しいたけ皮膚炎とは、生や加熱不足のしいたけを食べた後、数日で全身や顔に発疹やかゆみなどの症状が現れる皮膚炎です。場合によっては3週間ほど症状が続くこともあります。
しいたけ皮膚炎は、しいたけの加熱が不十分な場合、しいたけに含まれるレンチナンという成分が分解されず皮膚炎を引き起こしてしまうことが原因ともいわれています。
しいたけ皮膚炎を予防するために、しいたけを調理する際には中心部までしっかりと加熱することが大切です。次のポイントに注目すると、しいたけが十分に加熱されているかを確認できます。
- かさの中に水分が浮き出ている
- 生椎茸よりもサイズが少し小さくなり、かさがしんなりしている
- かさにシワができている
また、しいたけをしっかり加熱しても、一度に大量のしいたけを食べると、下痢・吐き気・腹痛などの症状が出る可能性があります。しいたけが食物繊維を大量に含んでおり、消化に時間がかかるためです。
いずれの場合も、しいたけを食べた後に体調の異変を感じたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
まとめ
しいたけの風味を最大限に楽しみながら食べるには、下ごしらえの段階で洗わないことが大切です。基本的に、しいたけは洗わなくても安全性が高い食材だということも理解しておくと良いでしょう。どうしても汚れが気になる場合は、短時間で水洗いする、塩水で洗う、ペーパータオルや付近で拭き取るなどの方法を試してみてください。
監修者プロフィール

小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。 シェフ歴30年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。 ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。 日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。