毎年秋になると新米が店頭に並び始めますが、「いつもの水加減で炊いたらべちゃっとしてしまった」という経験はないでしょうか。新米は通常の米と比べて水分量が多く、炊き方のコツを押さえないと本来のおいしさを引き出せないことがあります。
今回は、新米の特長をふまえた正しい水加減と、調理器具・浸水時間・水の質に合わせた最適な炊き方について解説します。
新米の特長

新米の水加減を正しく調整するには、まず新米がどのような特長を持つ食材なのかを理解することが大切です。ここでは水分量・食感・香り・甘みの観点から解説します。
新米の水分量・食感の特徴
一般的に新米とはその年に収穫・精米し、包装されたお米を指します。通常の米よりも水分含有率が高く、炊き上がりがふっくらもちもちとした食感になります。炊飯後のツヤが際立ち、見た目にもみずみずしい仕上がりが楽しめるのが魅力です。
チャーハンや酢飯など「パラパラ」した食感が必要な料理には不向きなため、お米そのものの味わいをダイレクトに楽しむのがおすすめです。
新米の香り・甘みの特徴
新米は収穫後まもなく出荷されるため、フレッシュな甘い香りが強いのが大きな特徴です。口に含むとやさしい甘みと旨みが広がり、素材本来の味わいをシンプルに楽しむ白ご飯として食べるのに最も適しています。
香りの成分は時間の経過とともに揮発するため、新米の時期ほど香りが際立ちます。品種によって甘みの強さや香りの特徴は異なるため、好みに合った品種を選ぶと良いでしょう。
コシヒカリやあきたこまちは粘りと甘みが強く、新米として特に人気の高い品種です。
新米の水加減のポイント1.調理器具によって調整する

新米をおいしく炊く上で最も基本となるのが水加減です。
一般的な炊飯の目安は「1合あたり水約200ml」ですが、使用する調理器具によって水の蒸発量や加圧のかかり方が異なるため、同じ新米でも適切な水加減は変わります。ここでは炊飯器・土鍋・圧力鍋それぞれのポイントを解説します。
炊飯器の場合(少し減らす)
炊飯器は密閉性が高く、水の蒸発が少ない調理器具です。水分量が高い新米のべちゃつきを防ぐには、通常よりも水を5〜10%ほど少なめにしましょう。1合あたり大さじ1/2〜1程度減らすのが目安になります。
炊き上がり後は15分ほど蒸らすことで全体の水分が均一になり、よりおいしく仕上がります。品種によって粘りの強さが違うため、数回炊いて好みの水量に少しずつ調整していきましょう。
土鍋の場合(少し増やす)
土鍋は炊飯器と異なり蒸気が逃げやすい構造のため、通常よりも水を多めにする必要があります。新米の水分量を加味した上でも、通常よりも水を5~10%ほど多めにしましょう。1合あたり大さじ1程度増やすのが目安です。
火加減は弱めの中火でじっくりと加熱し、沸騰したら弱火で約10分炊きます。火を止めた後は15分ほど蒸らし、蒸らし後すぐにほぐすことで、ふっくらとした仕上がりになります。土鍋ならではの遠赤外線効果で芯まで熱が通りやすく、炊き立ての香りも格別です。
圧力鍋の場合(少し減らす)
圧力鍋は蒸気を完全に逃さない密閉構造のため、通常と同じか若干少なめの水加減で炊くことができます。新米のべちゃつきを防ぐなら、通常よりも水を10%ほど少なめにしましょう。1合あたり大さじ1程度減らすのが目安です。
加圧時間は2分程度と短く、5合以上の場合でも3分程度で十分です。炊き上がったら火を止め、10〜15分ほど自然減圧で蒸らしましょう。圧力が下がったらすぐに蓋をあけてほぐすことが、おいしく仕上げるためのポイントです。
新米の水加減のポイント2.浸水時間は季節で変わる

水加減だけでなく、浸水時間もふっくらとおいしく炊き上げるための重要な要素です。お米の吸水速度は水温によって大きく変わるため、季節(気温)に合わせた浸水時間の調整が必要になります。ここでは夏と冬それぞれの目安を解説します。
夏(気温が高い時期)の浸水時間の目安
夏場は気温・水温が高いためお米の吸水が速く、30分程度の浸水で十分です。浸水時間が長すぎると炊き上がりがべちゃつく原因になるため、時間の管理が大切です。
水温は15〜20℃を目安に管理するのが理想で、浄水器の冷水を使ったり氷水を使ったりするのも効果的です。また、水温上昇による風味の劣化を避けるため、夏場は予約炊飯機能の利用を避けると良いでしょう。
冬(気温が低い時期)の浸水時間の目安
冬場は気温・水温が低く吸水が遅いため、1時間程度の浸水が目安となります。浸水時間が短いと米の中心まで水が浸透せず、芯が残ったり食感が硬くなったりする原因になります。
時間がない場合は、40℃程度のぬるま湯を使って15〜20分浸水させる方法も有効です。温度が高すぎると米の表面が糊化してしまうため、40℃を上限の目安にしましょう。
また、浸水が終わったお米は長時間放置せず、すぐに炊くのが風味を保つコツです。
新米の水加減のポイント3.水の質にもこだわる
水加減や浸水時間を整えても、使う水の種類によって炊き上がりの味わいや食感が変わることがあるため、水選びも重要なポイントです。ここではおすすめの水の種類と、水道水を使う場合の注意点を解説します。
軟水がおすすめな理由
日本のお米には軟水(硬度が低い水)が適しており、甘みや香りが引き立ちます。一方で硬水(硬度が高い水)はミネラル分が多く、お米の表面と結合して吸水が進みにくくなるため、浸透にムラが出て炊き上がりが硬くなりやすいです。
ミネラルウォーター(軟水タイプ)や浄水器でろ過した水を使うことで、新米本来の甘みと香りをより引き出せます。日本の水道水は一般的に軟水に分類されますが、地域によって硬度が若干異なるため、気になる場合は軟水のミネラルウォーターを選ぶと良いでしょう。
水道水を使う場合の注意点
水道水は消毒のために塩素(カルキ)が使用されており、独特のにおいや味が気になる場合があります。衛生上の問題はありませんが、風味が気になる場合はカルキ抜きをすると良いでしょう。
カルキ抜きの方法としては、沸騰させてから冷ます・汲み置きして日光に当てる・浄水器を使うなどがあります。カルキ抜きした水は冷蔵庫で保存し、1〜2日以内に使い切ることが大切です。
まとめ
新米をおいしく炊くためには、水加減だけでなく調理器具・浸水時間・水の質を総合的に調整することが大切です。炊飯器や圧力鍋なら水を少し減らし、土鍋では水を少し増やすというように、器具の特性に合わせた調整を心がけましょう。
浸水時間は夏場は30分、冬場は1時間を目安にし、水は軟水を選ぶことでさらにおいしく炊き上げることができます。新米を、ぜひ最高の状態で味わいましょう。
監修者プロフィール

小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。 シェフ歴35年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。 ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。 日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。



