なんとなく形が似ているピーマンとパプリカですが、よく比べてみると見た目や味、栄養価などに大きな違いがあります。よりおいしく楽しむためには、それぞれの特徴を活かして調理することが大切です。
今回は、ピーマンとパプリカの5つの違いをご紹介します。ピーマンとパプリカそれぞれのおすすめの調理法も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
◆ピーマンとパプリカの違い1.品種
ピーマンとパプリカは、どちらも「ナス科トウガラシ属」に分類されますが、トウガラシのような辛みはありません。この同じ分類の中でも栽培品種に違いがあり、ピーマンは中型種、パプリカは大型種に分けられます。
スーパーなどでよく見かけるピーマンは緑色ですが、実は、追熟によって黄色やオレンジ、赤色に変化してパプリカのような見た目になります。これらの熟したピーマンは、緑色のピーマンとは別に「カラーピーマン」と呼ばれ、大きさや形によって次の5種類に分類されます。
・パプリカ
・ジャンボピーマン
・トマトピーマン
・小型カラーピーマン
・くさび型ピーマン
パプリカはカラーピーマンのひとつであり、肉厚で青臭さが少ないのが特徴です。
◆ピーマンとパプリカの違い2.見た目
ピーマンとパプリカで一番わかりやすいのが見た目の違いです。ここでは外見の違いを解説します。
●ピーマン:比較的小さく細長い
ピーマンはパプリカに比べると実が小さめで皮は薄く、細長い形をしています。
未熟な時期に収穫したものはまだ緑色をしているので、緑ピーマンと呼ばれます。一般的に広くピーマンとして売られているのは、この緑ピーマンのことです。一方、緑のときには収穫せず、追熟させて色が変わったピーマンは、黄ピーマンや赤ピーマンと呼ばれています。
●パプリカ:肉厚で大きい
パプリカはピーマンよりも大きく肉厚で、ふっくらしているのが特徴です。ベルのような形をしているので、ベル型ピーマンとも呼ばれています。パプリカもピーマン同様、熟成する過程で黄色やオレンジ色、赤色へと変化していきます。
緑色の未熟な状態で収穫されるピーマンに対して、パプリカは完熟の状態で収穫されることがほとんど。スーパーなどで赤色のパプリカを見かけることが多いのはこのためです。
また、一般的なピーマンに比べて、パプリカのほうが3倍ほど大きいのも違いのひとつです。パプリカを購入するときは、色が濃くてツヤやハリがあり、ある程度の重みがあるものを選びましょう。
◆ピーマンとパプリカの違い3.味
ピーマンとパプリカは味にも違いがみられます。ここでは、それぞれの味の特徴をご紹介します。
●ピーマン:独特の苦みがある
ピーマンは未熟な状態で収穫するため、独特の青臭さと苦味があります。ヘタの形が五角形よりも六角形のもののほうが苦味が少ないともいわれているので、苦手な方はヘタの形を見て選んでみるのも良いかもしれません。
苦みが特徴のピーマンですが、完熟して赤ピーマンになると、緑ピーマンに比べて苦味が軽減されます。そのため、苦味に敏感なお子さまでも比較的食べやすくなるのがポイントです。
また、赤ピーマンの熟成過程ではカプサンチンという赤色色素が生成されます。これはβ-カロテンの一種で高い抗酸化作用があるため、食べやすさだけでなく、生活習慣病を予防する効果も期待できますよ。
●パプリカ:フルーティな甘味がある
パプリカは果物のような甘みがあるのが特徴です。完熟に近づくにつれて糖分が多くなるため、熟成度合いによって甘さが異なります。
・赤色のパプリカ(完熟):パプリカのなかでは一番糖度が高い
・オレンジ色のパプリカ(中熟):程よい甘みを楽しめる
・黄色のパプリカ(早熟):さっぱりとした甘さと酸味を味わえる
◆ピーマンとパプリカの違い4.栄養価
ピーマンとパプリカはどちらも栄養価の高い野菜です。抗酸化作用があるビタミンCやビタミンE、免疫機能の低下を防ぐβ-カロテン、腸内環境を整える食物繊維などが豊富に含まれています。100gあたりの栄養価の違いは次の通りです。
β-カロテン | ビタミンC | ビタミンE | 食物繊維 | |
---|---|---|---|---|
ピーマン(緑) | 400㎍ | 76mg | 0.8mg | 2.3g |
黄パプリカ(黄ピーマン) | 160㎍ | 150mg | 2.4mg | 1.3g |
オレンジパプリカ(オレンジピーマン) | 420㎍ | 150mg | 3.1mg | 1.8g |
赤パプリカ(赤ピーマン) | 940㎍ | 170mg | 4.3mg | 1.6g |
トマピー(ミニパプリカ) | 1700㎍ | 200mg | 4.3mg | 1.6g |
こちらの表から、完熟度の高いパプリカのほうが、緑色のピーマンに比べて栄養価が高くなっていることがわかりますね。
特に、緑色のピーマンと赤パプリカを比べてみると、パプリカのビタミンCやβ-カロテンはピーマンの2倍以上、ビタミンEはピーマンの約5倍も含まれています。
また、パプリカは色によって栄養価が異なります。表からもわかるように、β-カロテンやビタミンEなどは、黄色・オレンジ・赤色と完熟度が増すにつれて、栄養価も高くなっていく傾向があります。見た目や味わいの違いだけでなく、栄養価の違いも意識してみると、さらに選択の幅が広がりますよ。
余談ですが、近年はトマトのような見た目のトマピー(ミニパプリカ)も栄養価が高い食材として注目されています。
◆ピーマンとパプリカの違い5.調理方法
ピーマンとパプリカは、それぞれおすすめの調理方法が異なります。ここでは栄養素を効率良く取り入れながら、おいしく食べるためのコツをご紹介します。
●ピーマン:加熱調理がおすすめ
ピーマンにおすすめの調理法は、炒め物などの加熱調理です。一般的には熱に弱いとされるビタミンCですが、ピーマンにはビタミンCを熱や酸化から守ってくれる成分が含まれるため、加熱してもほとんど損なわれることがありません。そのため、ほかの野菜よりも効率良く栄養を摂取できます。
また、ピーマンは和・洋・中ジャンルを問わず、どんな料理でも使いやすいですが、特に油料理との相性が抜群です。ピーマンに含まれるβ-カロテンは脂溶性であるため、油を使って調理することで栄養の吸収率を高めることができます。
さらに、油を使用して高温で調理すると、苦味を和らげる効果も期待できますよ。反対に、ピーマンのほろ苦い味わいを楽しみたい方は煮物にするのがおすすめです。
ただし、生で食べると苦味が強く感じられるため、生食にはあまり向いていません。サラダとして食べたい場合、品種改良によって苦味や独特の香りを抑えたピーマンも出回っているので、そういった種類のものも選んでみましょう。
●パプリカ:加熱調理だけでなく生食もおすすめ
パプリカはクセが少なく甘みがあるので、加熱調理だけでなくサラダなどの生食にもぴったりです。ナムルやマリネにして作り置きしておくと、あと1品欲しいときに便利ですよ。
他にも、炒め物や煮物料理などに使うと、カラフルな色合いで彩りがアップし、見た目にも食欲をそそる仕上がりになります。
ただし、熱に弱い栄養素もあるため、長時間の加熱には注意が必要です。栄養素をなるべく逃したくないときは、短時間でさっと揚げたり、炒めたりするのがおすすめです。煮込む場合はスープやシチューなどにすると、溶け出してしまった栄養素も摂取することができますよ。
◆まとめ
ピーマンとパプリカの違いを知って使い分けることで、それぞれの特性を活かした料理が作れます。
見た目や味はもちろん、栄養価の違いやおすすめの調理方法なども覚えておくと便利です。例えば、ピーマンやパプリカに含まれるビタミンCは熱に強いため、加熱調理にも向いています。
ピーマンの苦味が苦手な方は調理方法を工夫してみたり、甘みのあるパプリカを使ってみたりすると食べやすくなるので、ぜひ試してみてくださいね。
▼監修者プロフィール
小森 幸夫(こもり ゆきお)
1971年3月29日生まれ。
シェフ歴30年以上にのぼるピエトロの名物シェフ。野菜ソムリエの資格も持つ。
ホテル・レストランシェフとして10年経験を積んだ後、縁あってピエトロへ入社。
日々厨房に立ち、商品のアレンジメニューやおいしい食べ方を追求しながら、繊細かつユーモラスなメニューの開発を担当。また、大人向け、子ども向けの幅広いジャンルの料理教室も開催するなど、ピエトロの多くの事業に携わっている。